ADHD高専生、院生になる

(旧ブログ:はいぱーあくてぃぶらいふ) 7年間高専に通った物好きが大学院生になりました。

「なぜ学生は、やるべきことができていないとき音信不通になるのか」に対する限界大学院生の見解: コミュニケーションの双方向性と、SNS上における教員発言の影響について等

お久しぶりです。限界大学院生です。色々あって、オーバードクター生活を送っております。 色々近況報告をしたいのは山々なのですが、本日は少し別な話に文量を割きたいと思います。本来であればなるべく避けたい、一個人の発言に対する(おそらく批判的な)見解の記事なのですが、研究室に所属する学生として、そして「音信不通の前科」持ちとして、どうしても言及したく思います(2022年10月28日追記: 一部加筆修正しました。記事根幹はそのままですが、肩書の記憶違いなどの修正が入っています。あとリンクを足しました。入院のところですね。)。

免責事項

  • 野球オジサンの特性上、野球の例えが混じります、ご了承ください。あ、時々サッカーにしてるところもあります。

発端

数日前、TL上に、RT経由でとあるツイートが上がってきました。おそらく大学等の高等教育機関にて教員をされている方と思われます *1

これから、こちらのツイートについて、僕の見解を述べていこうと思います。突然野球とサッカーが登場するのは、上記免責事項の通りです…。ご容赦頂ければ幸いです。 なお、既に最低限の見解は引用RTなどで申し上げているのですが(直接言及したのは下記)*2、もう少し一つ一つ掘り下げてじっくりと、僕の思うところを書きたかったので、今こうしてキーボードを打っています。

来ると分かっていてもバットにかすらない、剛速球のごとき正論と、それゆえの悲鳴

 まず初めに申し上げますと、上記ツイート内容「そのもの」については、異論はありません。ぐうの音も出ないほどの正論であり、だからこそ、引用RT欄を中心に「耳が痛い」と感じた方々の反応が多くみられます。音信不通になってしまった経験のある方々は、結構いらっしゃるのだと思います。僕も一人暮らしを始めてから生活がとんでもないことになり、不調期にはほぼ動けず不登校に近い状態になり、回復するとまた現れるといったのを繰り返してきた身でして、大変耳が痛い部分でありました。

 個人的見解として、この話がとりわけ大事になってくるのは、卒業あるいは修了後、仕事に就いた場合ではないかと思います。出来ない見込みが高くなった時において、それを申告できぬままタスクを遂行できなかった場合、あるいは期日に間に合わなかった際、失う社会的信用が大きいことは承知しているつもりです。保険の告知事項ではありませんが、正直に言うこと、むしろそれが重要である。それはまさしくその通りで、僕の考え(特に社会人において)とほぼ乖離はありません。学生の間にそのトレーニングができるに越したことは無いでしょう。僕をはじめ、あのツイートが刺さる方々の多くは、似たような認識を抱いているのかなと想像しております *3

 ではなぜ僕が本件で申し上げたいことがあるか、それは記載内容ではなく、問いかけの仕方にあります。

人間の防衛機制としての逃避に対し、双方の立場からどう向き合うか

 その前に一旦、この非合理的と自覚しつつも起こしてしまう「音信不通」状態がなぜ起こるか、自己防衛本能という側面から考えようかと思います。趣旨としては「だから仕方ないよね」ではなく、「人に備わっている防御機構であるならば、方法論を考えていかないと解決しないのでは?」というものです。

 僕は高専時代の保健体育で、心理的ストレスを受けた際に人間がとる防衛反応について習ったのですがだいぶ忘れていたのでちょっと調べなおしました。学術的には「防衛機制」と言うようです。分類の仕方や出てくる機制の種類は見る資料によってまちまちなのですが、基本的には、「(健康上)ベターな反応」とそうでないものに分類できるようでした。そういえば欲求をスポーツや勉学で発散する「昇華(これはベターなものの例)」とかやった記憶があるな。

 さて、今回のような「音信不通」ですが、おそらく「逃避」が一番近いと思います。これは精神衛生上好ましくない防衛機制とされておりますが、確かに時が経つにつれ気まずさ、申し訳なさが増していき余計に言いづらくなるというスパイラルが起こりがちですからね…。あとは逃避に限らず好ましくない機制はそもそもの精神状態が悪いときに発生しがちという面もあるようです。卒研などで進捗が出ないなど、やはりプレッシャーになる部分もあり、そういった要素も絡んでくる可能性はありうるのかなと。

 いずれにせよ、逃避として出るか、別のものとして出るかの差はあれど、心の安全装置です。ベターな形で出てくるに越したことはありませんが、「なぜそうなってしまうんだろう」という部分については、投げっぱなしではなく、教員も学生も双方で考えていかないといけない部分だと思います。安全装置を無理やり外すわけにはいかないので、方法論として、です。

  この「双方で考える」という要素、ここなんですよ。ここが感じられなかった。それが、本件で最も引っかかった要因です。

コミュニケーションの双方向性について

その1: 「悪送球か、捕球ミスか?」(「パスが悪いか、トラップ(受け止め)ミスか」)

 僕が凄く拘っており、同時に気を付けるようにしている概念があります。僕の知り合いなら、n回聞いたという人もいるかもしれませんが…それが以下です。

「コミュニケーションの問題である以上、よほど極端なケース(見知らぬ人からすれ違いざまに「なんだてめえ!」って言われるなど)でもない限り、割合は違えど双方に原因があると考えることが重要である」

 よく「会話のキャッチボール」などという表現が使われると思うのですが、実際こういったコミュニケーションについては、相手がいて、双方向性があるものです。だからこそキャッチボールは絶好の例えなんですよね*4

 野球のエラー判定などを見ていても、「送球した側」「捕球できなかった側」どちらにエラーの記録が付くのかという問題があります。記録上は、捕球できなかった側のエラーになっていても、映像で確認すると「あのバウンドでは、まあファーストなら捕ってほしいとはいえ確かに捕りにくいよね…」という事は結構あります。

 その時に送球側が「あれくらい捕れよ!ファーストなら!」となるようなチームでは良くない。基本的には、送球側も申し訳なさそうにしていることが多いですが。お互い様の精神で、エラーがあっても気持ちを切り替えて次のプレーに進まないといけないので。サッカーやバスケのパスプレーでも似たようなことが言えるかと思います。

 「なぜ学生は」という文言はあれど、自分について立ち止まって振り返るフレーズがなかった。双方向性のコミュニケーションのところです。振り返った結論が「珍プレー集に出てくるエラー」でどうしようもなかったとしても、一旦ビデオ検証ではないですけど、自分を振り返るといったものが見えていればな…。と、一学生が何を偉そうにと思うかもしれませんが、どうしてもそこは気になってしまった部分です。

その2: 「どこにいたら、絶好のパスが来るだろうか」

 さて、先ほどは送球、捕球という部分でコミュニケーションの双方向性について述べましたが、今回の事例は「音信不通」に対する教員サイドの苦言であり、そもそもボールがない状態です。ちょっとここは野球オジサンではありますがサッカーに切り替えていこうかと思います *5

 単刀直入に申し上げます。「もしかして、ボールのある場所から遠すぎてロングパス含め来ないパターンではありませんか?」あるいは、「ドリブル突破は得意だけどトラップ *6 やダイレクトシュート *7 などが苦手なため、パスプレーが主体の作戦だとあまりパスが回ってこないといったことはありませんか?」

 ここも結局はコミュニケーションの双方向性です。「なんで自分にパスが来ないんだ?」だけではなく、「一体どうやったらパスが来るようになるだろうか」といった視点があればなあ…と。細かいパスをつないでいくスタイルが望ましければ「小さなことでも相談しやすい環境になっているかどうか」といった面も考えていただきたい部分です。今回の教員の方がいらっしゃるラボがどういった感じかは存じ上げませんが、他のツイートなどを拝見するに、他責気味な印象は受けてしまいました。

 ここまでいくつかコミュニケーションの双方向性という話でああだこうだ述べましたが、1, 2を合わせると、僕としては、

  • 「なぜ学生は、やるべきことができていないとき音信不通になるのか」という問いだけで止まってほしくなかった

  • 学生側が考えねばならぬ面があるのは事実なのを前提として(これは次の項で考えていきます)、同時に

    • 「どうやったら学生が音信不通にならないようにできるか」
    • 「どうやったら早めに相談してもらえるか」

という、この一言。この一言が欲しかったわけです。文字数は、140を超えずに足せたはずです。音信不通状態になってしまい困っている学生があれを見て、早く相談しようとなるかどうか、僕はあまりならないと思います。「なぜお前たちは…」というような、そういった圧を感じかねないからです。切羽詰まった学生さんは特に。

 実をいうと、僕も元から双方向性という考え方を持っていたわけではありません。この考えに気づかせてもらったのは、地元で塾講をやっていた時、塾長との会話でハッとさせられたことがきっかけでした。教える側として、「なんでできないかね」となる前に「うまく伝えられているんだろうか」と立ち止まらないとならん。と気づかせていただいた、あの時が無かったら僕も今どういう思考回路だったかはわかりません。ただただありがとうございますの一言です。

 話を戻すと、こういった概念については、僕が講師時代に経験した出来事という事や今回のツイートの件などをふまえると、特に指導側が意識する概念なのかなと思っています。しがない大学院生が何を偉そうに、となるかもしれませんが、ディスコミュニケーションで叱責される、あるいは疑問を持たれるのは、シチュエーションも踏まえるとやはり教わる側や部下などが多いのかなとは思います。

その3: 「いつ投げればいい?」「レーザービームか、中継プレーか?」学生側として、SOSの出し方をどう考えるか

 ここからは双方向性のもう一方、学生側の話に入ります。ただし、僕自身もSOSの出し方がめちゃくちゃ下手です(2020年の入院 *8あたりから、ようやくちょっとは出来るようになってきたかな…あとはコロナをきっかけに研究室でslack導入したんで、メールよりslackのが個人的に連絡のハードルが下がったというのはあります)。なので、SOSの上手な出し方などは僕自身も考えていかないといけない部分ではあります。要は、参考にならない可能性が高い。

 そんな中でも、限界オーバードクターとして、例えば配属されたての学生さんなどに何か言えることがあるとしたら…。そうですね、以下の点でしょうか。  ※僕はかなり環境に恵まれて今こうして(オーバーしたけど)ドクターやっている身です。そうじゃなかったらこのSOS力では今どこで何をしていただろうか、ちょっと分からないです。これは本当に。なので、そこの環境バイアスを極力取っ払い、以下記します。その分、一般論に近いのもあるのでそれはそれであまり役に立たないかもしれないのですが…僕自身の話は、本来はここの記事に合体したかったんですけど、予想以上に長くなったのでまた別枠にします。これでも頑張って注釈に移して短くしようとした方なんですが、あれ…?

一言で言うなら、「相談先の分散」がポイントというところでしょうか。捕った球をどこに投げるか、状況次第で選択肢が変わってくるという感じですね。それをやったら長く書いたのが以下です。

  • 配属直後 *9 、研究室の雰囲気をなるべく早くつかめるといいかなと。オリエンテーションで研究室の方針とか色々説明がある場合はそれも大きな手掛かりになります。ちょっとしたことでも質問できる雰囲気かどうか、指導教員(助教もいる場合などあるので、そういう時はスタッフ全般)と先輩学生たちとの距離感、やりとりを観察したり、先輩に質問したり…。そんなこんなで以下の点がなんとなく思い描けたらベスト

    • 一番相談しやすそうな人は誰だろうか。 指導教員に相談がベストですが、最初のころ、もしハードルが高い(例えば、なんて聞いたらいいか分からず不安など)だったら先輩にまず聞いてみるっていうのはありだと思います。いきなりレーザービームでキャッチャーにノーバウンド送球が出来なくても大丈夫。中継プレーで得点を防ぐのもまた見ていて盛り上がります。ってこれ野球だ。ええっと、要はスモールステップでも徐々に慣れていきましょうってところです。あとは、慣れてきても案件によっては学生に聞いた方がいいことも(この道具どこいきました?とか)ありますし。もしいきなりレーザービーム放れと言われた時のことは後述します。
    • どのタイミングで相談できそうか。定期的にミーティングとかあるところがほとんどだと思いますが、基本は野球で言ったら捕ってからすぐ送球する感覚(緩いゴロをゆっくり処理してセーフになったら勿体ない)でやっていくのがベストです。例えば実験をするところだったら、データが出たらすぐとか、あるいは何か質問があったらすぐ…ですが、「投げようとしたらまだ人がいない(カバー担当が一生懸命塁に向かっている途中)っていうのは現実野球イベントです。まあ、そういう時はすぐ塁につくのでワンテンポ置いて送球ですね。様子を見ながら慣れていくところでしょうか。例えばボスが会議で忙しいときは助教や先輩にまず見てもらうっていうステップを踏む場合もあります。送球先はどこかなという見極めが効いてくるのがこのあたりです。そもそも誰も塁にいないし塁に来る気配がないってなったら…レーザービームの件と合わせて後述します。
    • 上記に関連して、「今日ミーティングだけど進捗ダメです…」案件が来た場合。これが多分、山場かなと思います。プロジェクトによっては仕込みの段階でかなり時間がかかるので、ミーティング等の時、目に見える結果などがなく「今これをやっています」しかないことは珍しくない話です。そこは、その分野の人ならちゃんと分かるので基本は大丈夫なはずです。結果ではなく、今この段階で、その次はこれをやりますというところがちゃんと言えるかなという要素が大事になってきます。と言われたところで、結果の無い物体を出すことに不安はつきもの、あるいは仕込みに時間が…とかではないものの、プロジェクトがなかなかうまいこと行かず、試行錯誤してもさっぱり…という段階。これらが音信不通のトリガーとして主たる部分かなと。ここで上記の送球先決定段階がやはり効いてきます。真っ先にボールを捕ってくれそうな人は誰かなと。このあたりで詰みそうだなってなった時の話など、以下で(一般論ではありますが)お話しします。
  • いきなりレーザービーム要求、送球先に誰もいない、進捗ダメですってどうしても言いにくい or 言ったら凄いことになったなど…という場合

    • 次の送球先候補は学生相談室です。「え?研究室の話?」って思うかもしれませんが、おそらく大抵の大学等では、研究室での悩みや、履修の悩みなど学修における困りごとの相談先、窓口としてまず学生相談室という流れになると思います。プロのカウンセラーさんはもちろん、連携のためにも、各専攻の先生が配属になっている場合もあります。これは音信不通状態にまで進んで「もうアカン」となった場合にもメンタルケア的な意味合いも込めて、相談をお勧めします。

教員と明記するアカウントでのツイートを、僕はどう受け止めるか

 はあ?まだあるの?と思うかもしれませんが。これで最後です。本件、ここまでは「コミュニケーションの双方向性」という視点から書きましたが、タイトルにあるもう一つの話をします。

 SNS、特にTwitterには様々な分野のアカデミックポストの方がいらっしゃいます。僕も分野が近い方など、何人かの先生をフォローさせていただいています。その先生方はこれからいう話には当てはまらない(当てはまっていたら、僕がビビッてフォローできないですw)のですが…。本件の方がそうであるように、所謂「学生の愚痴」のようなものをガンガンツイートする人が一定数いらっしゃるんですよね。何件か見かけてしまったことがあります(アカウントとかはもう忘れてしまいましたが)。

 これ、かなり学生を萎縮させると思います。もし自分のボスがツイッターで自分たちの愚痴をつぶやいていると分かったら学生さんたちは何を思うでしょうか。いや、所属先でない(どこの所属か特定しかねる)場合でも、教員という立場から放たれる学生への不満は結構なインパクトファクター攻撃力があると思っていただけると幸いです。少なくとも、本件のように「なぜ音信不通になるのか、もっと早く言えばいいのに」というのをツイッターで大っぴらに発信してしまう先生に相談するのめちゃくちゃビビりますよ。恐らく。僕、3年くらい前なら多分めっちゃビビってたと思います。

 「ちょっとその発言をしておきながら「早く相談すればいいのに」は無いでしょう」と思って苦言を呈してしまいましたが、ええっと、他の学生さんは真似しない方がいいと思います。

 僕がもしアカデミックポストに就くとしたら、ちょっとそういったところは気を付けたいです。学生の愚痴を言うつもりはありませんが、少なくとも今のアカウントの路線は別の意味でこう、あれかなと(政治ネタRTとか野球おじさんモードとかが強すぎるので、仕事のを作ると思います。それで過去が清算されるとは思っていませんが、かといって継続運用するにはあまりにも癖が強すぎるので…)。  

最後に

 本当は、「SOSを出しやすい環境でお世話になっているのにも関わらず音信不通を何回もやらかした僕の話」もしたかったのですが、予想以上に記事が長くなったので、この記事はここで一区切りにします。自分のSOS力を振り返る作業もちょっとやらないとなという部分はあります。ただ今日はもう、コンサータ切れたんで営業終了です泣 にしても相変わらず長文直らんなこれ。

*1:余談なのですが…。実はこのアカウントの方、何度かツイートを拝見した覚えがあります。当時のツイート内容などはさすがに忘れましたが、最後に拝見したときは理系分野のポスドクか博士課程の方だったような気がして、ああ時が経つのは…などと思っていましたが、その後別なツイートに「長年教員を」というフレーズがあったので、おそらく当時から教員の方だったと思われます。お詫びして訂正いたします。

*2:しかし最後のツイート、日本語が我ながら意味不明である…。あと引用RTもツリーっぽくできるようにならないかな、ツリーに手動で@つけるしかないか

*3:もちろん正確なところは定かではありませんので、あくまで仮定です

*4:やっぱり人生は野球だなと思う瞬間ですね。いや、個人的な人生観です。

*5:サッカーは見るよりやるのが好きですね。実は小学生の時1年間だけではありますが地域のスポーツ少年団でサッカーを習っていました。チームの監督とは、後に思わぬ場所で再会することになったのですが…。気になる方は個別にw

*6:ボールを足で止める技術

*7:パスを受け取った時、トラップせずそのままシュートへ移る

*8:

notadsl.hatenablog.com

*9:できれば配属先を決める段階がいいのですが、希望のラボに行けるとは限らない、あるいは入ってみないと分からないところがあるので